今だから話せる不妊治療話

現在38歳、昨年第1子出産。4年間で5つの病院を経験した不妊治療の記憶。

顕微鏡で見たおたまじゃくし

更新が長らく途絶えていました。昨年夏に出産し、毎日があっという間に過ぎて気づけば前回の記事から8ヶ月経過…!なんとか少しずつ時間を見つけてまた少しずつ綴っていきたいと思っています。

Nクリニックでの人工授精で独特だったのが、夫のおたまじゃくしを毎回顕微鏡で見せてくれたこと。「元気に動いていますよ〜」と、妻の私にも確認させてくれたのだ。今まで運動率や量については問題ないですと言われてきたが、所詮紙に書かれた数字でしか見たことはなかったので、実際に動いているのを見た時はほっとしたというか感動したというか、百聞は一見に如かずで数字がリアルなものに感じられた。

余談だけれど、人工授精がある日は半日かかるのでゆったりした気持ちで臨むことが大事。朝一番に夫の分を受付に渡し、2時間くらいしてようやく呼ばれるので、それまで一旦外に出てカフェで過ごしていた。あまりお店がたくさんある界隈ではなかったけれど、いかにも美味しいコーヒーを出してくれそうな昔ながらの喫茶店があってよく通っていた。一番おすすめのブレンドコーヒーが本当に美味しくて、時間が経っても最後の一滴まで美味しい。平日の空いてる喫茶店で一人ただただ時間が過ぎるのを待つのもシュールだったけど、唯一の楽しみだったなぁ。

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結局そのお店にも5~6回通ったのか…。この時点で人工授精は通算10回くらいチャレンジして一度もかすりもせず。さすがにまずい。何か原因を探らないと、次のステップは体外受精になってしまう。費用も桁が違うしできれば避けたいと思ってきた道。ましてや自分は「そちら側」ではないと思っていたから、ここから先へ進むかどうかは非常に大きな決断となる。

そんな折、ふと父親からメールがあった。「男性不妊の特集がテレビで放送されてたよ」と。

つづく

 

 

そんなに注射を打つ必要があるのか

Nクリニックに転院してまずは「卵巣年齢」を調べることに。以前から調べた方がいいことは本を読んで知っていたけど、いざその時が来ると怖いもので。。もしも実年齢よりもずっと上だったらどうしよう…。

幸い、特に問題はないとの結果が出たのでいざ人工授精へ臨むことになった。がしかし!このクリニックで私が疑問で仕方なかったのが、やたら排卵誘発のホルモン注射を打ちまくること。体外受精ならガンガン打つイメージがあったのだが、人工授精でもこんなにたくさん打つ必要あるの??私は前のクリニックではクロミッド経口排卵誘発剤だけでも十分育っていたのに。

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卵は最低でも5個以上、多い周期の時は9個くらい育っていた。医師曰く、「私の経験上、多く排卵した方が妊娠する確率が高い」とのこと。過去の妊娠した患者さんたちの記録ノートまで見せてくれて、「この人は○個、この人は○個で妊娠。」と説明までされた(個人情報漏らしすぎ)。ウゥン、そうかもしれないけれど、私の卵巣は大丈夫なんだろうか。

この頃になると私もいろんな情報を本から得ていたので、医師の言葉を丸呑みにはできないことも多かった。排卵誘発の注射は、元々育ちきれず自然淘汰されるはずの卵子を叩き起こして成熟させるようなものということで、卵巣にも過剰な負担がかかるし大きく腫れるらしいではないか。

幸いそこまでお腹が痛いとかいう副作用はあまりなかったが、通常は一月に一個の卵子があれば妊娠できるのに、数打ちゃ当たる的なやり方がどうも納得いかなかった。とはいえこちらは素人の知識しかないので、やんわりと医師に疑問を伝える程度しかできず、1回注射を減らすくらいしか対応してもらうことはできなかったのでした。つづく。

 

 

引くぐらい前のめりで陽気な医師

人工授精を5〜6回行っても妊娠に至らない場合に、体外受精をはじめとする高度生殖医療に移行することが一般的です。

 と『あなたが妊娠する3つの理由』(放生勲 著)の本に書かれていた。がしかし、え、もう私は体外受精をしなくちゃいけないの??という疑問が頭をぐるぐる。

だって、体外受精といえばなんと言っても費用が莫大にかかるし、そこまでするほどの決定的な不妊の原因が私たち夫婦には見つかっていない。まだもう少し人工授精に望みを託したい…。

そんなわけで、治療再開に向けての次の病院は、前より少し家から距離はあるものの自転車と電車で30分ほどで通えるNクリニックを選んだ。またもや街中のレディースクリニックで、不妊治療の専門医ではなく前回と規模は変わらず。しかしここは知人が通って良かったと話していたところ。診療科目も一番上に「不妊症検査と治療」と書いてあるし、ここはひとつ気持ちを新たに託してみようと思ったのでした。

 

行ってみると、そこの医師はなんとも陽気なおじさんという印象。よくしゃべる。過去の妊娠した患者さんの手紙などを見せてきたり、前のめりになって話してきたりと、熱量がYクリニックの医師と全然違う。

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ちょっと引き気味な自分がいたが、無感情の医師より全然良いなと感じた自分もいた(夫も一緒にいたが、どうやら彼はかなり引いていたようだ 笑)。

これまでの私の治療経緯を話したところ、ではもう少し人工授精にチャレンジしてみましょうという流れに。この病院で結果が出ると良いな…。期待半分、不安半分。まだまだ先の見えない不妊治療の長い道のり。このNクリニックを選んだことが吉と出ますように。

 

子宮頸がん手術で不妊治療を一旦お休み

不妊治療と並行して子宮頸がんの定期検診も続けていたのだが(婦人科検診で一度引っかかり、経過観察の検査を2年?ほど)、ここに来て経過が思わしくなく、より詳しい検査を必要とすることになった。そもそも子宮頸がんというのは、進行は比較的遅くなおかつ自然治癒していくパターンも多いので、経過観察という手法がとられることが多いのだが、私のそれはゆっくりと悪化しているようだった。

クリニックの先生曰く、手術が必要かもしれないとのこと。そうなると、もちろん不妊治療などしている場合ではなく一旦お休みせざるを得ない…。さすがに私もそれは承知せざるを得ず、がんの精密検査ができるA病院へと紹介状を書いてもらうことになった。

しかしここでもこの先生は無表情というか無感情というか。せっかく期待を持って人工授精に臨んでいた最中に、がんの手術でお休みしなくちゃいけないなんて、患者からしてみたらこんな悲しみはないと思うのだが。このとき、もうこのYクリニックには来ることはないな…と悟った。

A病院はがん患者を主に受け入れている専門病院で、初診は不安でハラハラしたものの、ここなら大丈夫という安心感があった。結果から言うと、手術をした方が良いという診断が下され、入院期間は2泊3日。私の場合はがんの前段階である「子宮頸部高度異形成」というもので、細胞の病変部分を切り取る「円錐切除」という手術を行うことになった。

(入院や経過についてもいろいろ書きたいことはあるけれど、不妊治療のブログなので深掘りしてもあまり関係がないのでここはさらりと…。)

手術をしてから1週間は自宅療養。約3ヶ月程は出血が続くのでお風呂にも入れず、真冬の時期だったのでこれがかなりキツかった。。幸い、病変はうまく切り取れたようで、あとはまた定期検診を続けることに。

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後から文字で書くとあっという間だけれど、実際の時間の流れは遅くて遅くて、そうこうしているうちに年も取る。早く赤ちゃんが欲しいなぁと思う気持ちが余計に自分を焦らせる。出血が治ってお風呂が解禁された頃、また次の病院探しを始めるのでした。

 

あっさりと終わった人工授精

タイミング法を3ヶ月ほど実践したものの妊娠には至らなかったので、人工授精へとステップアップすることに。人工授精は、名前からするととても機械的で誰もが抵抗感のあるものだと思う。ついに私もこの段階へ突入することになってしまったか…と、自然に妊娠することへの諦めを感じざるを得なくなってきていた。とはいえ、人工授精はあくまでも卵子精子の自然の力で妊娠するのを少し医師がお手伝いするくらいの感覚ということなので、心を決めてチャレンジすることにした。

一番大変だったのは、きっと夫だったと思う。朝一番で精子を採取するというミッションをよくやってくれたなぁと感謝感謝。私はそれを持って病院へ行って、カテーテルでさっと入れてもらうだけなので、一瞬で完了。本当に入っているのか?!と毎回心配になるけれど、医師を信頼するしかない。しかも、入れる前に本来だったら厳重に夫の精子であることの確認をするはずなのに、私には一切確認を取らずに終わっているという…。小さいクリニックだからその日精子を持ち込んだのが夫だけだったのかもしれないけれど、念には念を入れて確認を取るのがベストなのでは??もし万が一違う人のだったら大問題だよ。と、またまたYクリニックへの不信感がふつふつと…。

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人工授精はその後5、6回チャレンジしたものの妊娠には至らず。そんな折、以前から定期検査していた子宮頸がんの結果が思わしくなく、大きな病院で精密検査を受けることになるのでした。つづく。

 



漢方薬が効くと思っていなかった看護師

基礎体温を測っていると、高温期の上がり方が鈍かった私。本来は排卵日にグッと上がるのが理想なのだけど、じわじわと3日くらいかけて上がる。しかも最高でも36.5度くらい(だったかな?と確認のために以前使っていた体温計のアプリを見返してみようと思ったら、先月末でアプリが終了していた…!!)。クリニックで処方された漢方薬は「温経湯(ウンケイトウ)」というもので、「月経異常や不妊に悩む女性によく用いられる」らしい。これで改善されるといいなと期待を込めて飲み始めることに。

飲み始めてどれくらい経った頃か忘れてしまったが、なんだか足が異様に火照るようになってきた。血行が改善されて冷え性が無くなった感じがするのはいいけれど、あるとき通勤中の電車の中で靴を脱ぎたくなるほどの熱い感覚があり、これはちょっと異常なのではないかと思って診察の際に質問してみた。

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すると、看護師さんがひとこと。「効くのね…!」と。

まるで漢方薬は効かないみたいな、気休めでしかないみたいな、本当に効くとは思わなかったみたいな、そんな心の声が聞こえるような一言だった。いやいや、処方する側がそんな考えじゃダメでしょ…。

こうしてまた一つYクリニックへの不信感が増えていく。

不妊治療いうのは、治療と名はついていても実際には「不妊症」という体質で病気ではないことが多いので、医師が「治療」するものではないのが他の病気と全く異なるところ。なので、小さな街のクリニックではなんとなく漠然と不妊治療を行っているところが多いのではないかと思う。漢方薬も本来はその人に合った体質を見極めて処方するものなのに、非常に安易に一般的なものを処方されたような感覚を受けた。もちろんそれで早々に授かれたならその漢方を飲んで良かった!!というハッピーな記事を書いていることでしょう。クリニック選びは本当に難しい。結果的に5箇所通院して痛感。でもこの時はまだまだここの医師と自分の妊娠力を信じていたのでした。

夫婦で歩む不妊治療。

Yクリニックで始めた卵の経過観察というのは、卵子が正常に育っているかどうかを調べていくのと合わせて、タイミング法も合わせて行っていくような感じだった。私の卵はどうやら正常な育ち方ではなかったようで、いくつか候補になりそうな卵胞があるのだけど、1つの卵だけ選抜されて大きくなっていくという様子が見えない状態。あれ?これって本で読んだけどホルモン値が足りないのでは?だけど前回のクリニックの検査では問題なかったはず…。と、また小さな不信感が出てきたが、そんなモヤモヤした気持ちは自分の中に押し留め、先生からはクロミッドを処方されることに。3日間ほど飲むと卵が1つ大きく育ってきた!

そして先生からは、「この日とこの日、タイミングとってね」との指示。それを夫に伝えるのが少々気まずかったけれど、これはミッションなのではっきりと伝えるしかない。ただ、男性によってはこれがプレッシャーになってうまくいかないこともあるのだとか。。幸いうちの夫は快くOKしてくれた(ように私には見えた)。とはいえさすがに最初は「そんなことまで指示されるの?!」と戸惑っていたような記憶も無くはない。

不妊治療は女性一人でできるものではなく、夫婦が一緒になって同じ方向を向いていかないと本当にうまくいかないと思う。これは結果的に体外受精まで経験した私が強く感じたこと。人工授精を試みていた知人の女性は夫婦の温度感が違っていてイライラしていたことを思い出した。旦那さんが精子を採取しなければいけないのに夜勤明けで疲れてそのまま寝てしまったので、「出すもん出してから寝なよ!!!」と激怒したらしい。おぉ、こわい…。でもせっかく奥さんの方は通院や薬を続けて排卵日に整えてきているのに、それを台無しにされる気持ちも分からなくもない。。

みなさん、夫婦の間で同じ目標を持つことは何よりも大事です。

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